2017.03/25 [Sat]
失速した米銀行株、宴はまだ終わらず

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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トランプラリーの高揚感は徐々に消えつつあるものの、米銀行株の見通しは依然として明るい。
だが、ここ最近の米国株の急落局面で銀行株は特に大きく売り込まれた。KBWナスダック銀行株指数は22日まで4営業日続落し、4日間の下落率は6.2%に達した(23日は0.36%高と小幅反発)。KBWナスダック地方銀行株指数の下げは7.6%とさらにきつかった。一方、この4日間にS&P500種指数は1.4%の下落にとどまった。
相場が大崩れする前までKBWナスダック銀行株指数は大統領選挙以来28%上昇していたため、いつ調整が入ってもおかしくない状況だったのかもしれない。最近の市場動向は、金利上昇や広範な規制緩和への期待に支えられた超強気相場のどこに問題が生じ得るのかを浮き彫りにした。10年物米国債利回りはこの1週間で2.54%から2.4%に低下した。
一方、医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案を巡り米共和党内の調整が難航し、激しい論争が展開される中、ドナルド・トランプ米政権が公約に掲げる規制緩和の実現性に疑問が浮上している。
とはいうものの、金利と規制のどちらについてもさらなる前進が期待できそうだ。

米連邦準備制度理事会(FRB)は年内にあと2回か3回の利上げを行う見通しだ。今のところ、大半の銀行は長期金利よりも短期金利が上昇した方が大きな恩恵を受けられる。融資金利の多くは短期金利に連動しているからだ。長期金利が今後も低く抑えられたままなら、平たんな利回り曲線はいずれ銀行を圧迫しかねない。だが当面は、銀行にとってFRBの利上げは大きな好材料となる。
規制については、トランプ政権が自力でできることと議会の協力が必要なことを区別することが重要だ。年次ストレステスト(健全性審査)の対象となる銀行の資産規模の下限を引き上げることや、デビットカードの手数料に関する規制の撤廃など、中小銀行が求めてきた規制変更の多くは、議会での立法化が必要となる。
だが例えば、預金保険対象預金を扱う金融機関の自己勘定取引を禁止するボルカー・ルールは、施行の範囲を狭めた方が(法律を改正するよりも)はるかに簡単だろう。もちろん、そうなった場合に最も恩恵を受けるのは大手銀行だ。一部の大手銀の株価は依然、割安な水準で推移している。
例えば、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)とシティグループは、株価純資産倍率(PBR)が依然として1倍を下回っている。他の銀行の株価も全体的に見てそれほど割高ではない。KBWナスダック銀行株指数のPBRはここ数年、1倍ほどで推移しており、足元では1.2倍だ。
大統領選後の株高局面で突出して買われてきた銀行株だが、これからまだ金利や規制についての好材料が期待できる中、他の業種に比べて依然それなりの投資妙味がある。
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